国境の島「対馬」の名物郷土料理&そば 「いりやき」「石焼き」「対州そば」
記者:木村小左郎(旅コラムニスト)
福岡、佐賀、長崎各県の沖合い、ちょうど九州北部の玄海灘に浮かんでいる対馬。 韓国の釜山まで海上わずかに50kmという近い距離にあり、北端部にある展望台からは釜山の街や山並みが眺望できてしまう国境の島である。 戦前は釜山まで買い物に出かけていたというほど大陸との往来が盛んだった。
こう書くと、なんだか相当遠い感じもするが実は意外と近い。 福岡空港から対馬空港までは、わずか35分の空の旅だ。 羽田空港からだと、福岡空港経由で1時間の乗り継ぎ時間を含めても対馬まで3時間半で到着する。
今回は、この対馬で古くから食べられてきた豪快な郷土料理と地元産の粉を使った絶品そばをご紹介するのだが、 うまいもんの話の前にまずは訪ねてみたいみどころスポットをとりあげたい。
対馬藩主の菩提寺・万松院と石屋根倉庫
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古くから朝鮮との外交を一手に引き受け、幕府との関係も強かった対馬藩。 江戸時代には唯一の外交使節である朝鮮通信使が対馬を経て江戸に入ること12回に及んだが、 通信使の接待や外交文書のやりとりなどを仕切っていたのが対馬藩であり、 その歴代藩主・宗家の菩提寺が厳原町にある万松院。 元和元年 (1615)に建立された古刹で、百雁木 (ひゃくがんぎ)と呼ばれる132段の苔むした石段が墓所へと続いている。 両脇には立派な石灯籠が整然と並び、十万石にふさわしいたたずまいを見せている。 |
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もうひとつ興味深いのが、独特の石積み文化。 島の中心となっている厳原の町中には武家屋敷の重厚な石垣塀が今も随所に残っているが、 圧巻は石屋根の倉庫だ。
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朝鮮海峡に面した対馬西海岸は、冬になると風速十数メートルもの北西の風が吹き荒れる。 この強風や火災などから食料を守るために作られたのが石屋根の倉庫。 島で採掘できる頁岩(けつがん)と呼ばれる石は、まるで剥いだようにまっ平らであり、 それを幾層かに重ねて石屋根とし、さらに高床式とすることで風にも火にも湿気にも強い建物ができあがった。 現在も、厳原町西部の椎根地区などに現役の石屋根倉庫が残っている。 |
野趣あふれる「石焼き」と「いりやき」
前置きが長くなったが、いよいよ対馬のうまいもんといこう。離島だけにイキのよい魚介類がおいしいのはもちろんだが、 対馬ならではのシンプルにして豪快な料理が石焼きといりやきだ。
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石焼きは、厚さ10センチほどの自然石を2時間ほど焼き、 それをガスコンロに乗せてさらに加熱しながら魚介類や野菜を焼いて食べる料理。 タレは各家庭や宿で少しずつ違うが、宿泊した宿で味わったのはやや甘口の醤油ベースのタレ。 石の上に乗せるのはブリ、タイ、剣先イカ、サザエ、ヒオウギ貝にシイタケ、ピーマン、玉葱など。 乗せるとジュッと音がして、やがて香ばしい匂いが漂ってくる。さっとタレにつけて食べると、 鉄板で焼いたものとは微妙に異なる野趣あふれるうまさである。 |
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いりやきは、対馬地鶏か魚(メジナ、ブリ、アラなど)のどちらかが基本の素材。 水を張った鍋にそのどちらかと玉葱を入れ、1時間ほど煮込んで上等なスープをとる。 それに野菜を加え、酒と醤油で味を調えればできあがりだ。一見すると寄せ鍋風だが、 玉葱がきいているせいかスープが濃厚で味に深みがある。 その昔は、魚や鶏肉を椿油で炒ってから煮込んで食べていたことから「いりやき」という名前になったそうだ。 |
こんなにうまいそばは初めて!
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対馬に出かける前に、「そばがおいしいですよ」と言われていたが、 正直いって余り期待していなかった。 その期待をみごとに裏切ってくれたのが対州そば。 対州(たいしゅう)とは古代の対馬の呼び方で、この島で収穫したそばのこと。 山岳地帯が多い対馬では古くから焼き畑農業が行われ、 昔からそばを栽培して各家庭ごとにそばを打っていた。 今もほぼ全島で栽培されているが、対馬産のそばの実は粒が小さいわりに香りと甘みが強く、 つなぎなしの十割そばが特徴だ。 その対州そばの手打ちが味わえるのが、厳原町下原にある体験であい塾「匠」。 そば打ち経験のある地元の主婦が打ち立てを出してくれる施設である。 |
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「対州そばは粒が小さく、しかも少々粗く挽くので打つのがむずかしいんですよ」と語る西山昌子さんが打ってくれた、 ざるそばを賞味した。幅約2・5ミリの平打ち麺に近いそばをひとくちたぐると、 口の中にそばの風味がじんわりと広がり、噛むにしたがって優しい甘みが伝わってくる。 実にうまい! そば特有の風味はしっかりと主張しているのだが、 「いかにもそばだ!」ではなく、独特の上品な甘さゆえか、 控え目な主張が口中に広がるのだ。 旅行記者として30年、全国各地でそばを味わってきたが、 これほど感動したそばは初めてであった。 カツオ、サバ、コンブなどでとった、やや甘めで濃いめのそばつゆとの相性も抜群だ。 |
【問い合わせ】
対馬観光物産協会
〒817-0022 長崎県対馬市厳原町国分1441
対馬市役所1階
TEL:0920-52-1566

























